グロインペイン症候群にお悩みのアスリートの方へ
サッカー・陸上長距離・アイスホッケー・バスケットボール選手へ。グロインペイン症候群(鼠径部痛)は、ドーハ合意による分類で原因を整理し、キネティックチェーン(足関節〜股関節〜骨盤)の連動を整えることが回復と再発予防のカギです。足関節捻挫後に起こりやすい理由、競技別の特徴、改善のために何が大切かをわかりやすく解説します。
〜 サッカー・陸上長距離・アイスホッケー・バスケットボール選手へ 〜
「走り出すと鼠径部(そけい部)がズキッと痛む」 「キックやシュートの瞬間だけ、恥骨まわりがうずく」 「休むと少し楽になるのに、練習を再開するとまた痛みが戻ってしまう」
こうした股関節の付け根〜恥骨まわりの痛みで悩まされているアスリートは少なくありません。特に
- サッカー選手
- 陸上競技長距離選手
- アイスホッケー選手
- バスケットボール選手
など、「方向転換・ダッシュ・キック・ストップ&ゴー」の多い競技でよく見られます。
本記事では、グロインペイン症候群とは何か、なぜ足関節捻挫の後に起こりやすいのか、競技別の特徴、改善のために何が大切かをわかりやすく解説します。
グロインペイン症候群とは?
グロインペイン症候群(groin pain)は、特定の一つの病名というよりも、「運動によって鼠径部〜恥骨まわりに痛みが出る状態」の総称として使われます。
国際的な専門家会議(いわゆるドーハ合意)では、アスリートの鼠径部痛を以下のように分類しています。
- 内転筋(太ももの内側)関連の痛み
- 腸腰筋(股関節を曲げる筋肉)関連の痛み
- 鼠径部(腹壁)関連の痛み
- 恥骨周囲の痛み
- 股関節そのものからの痛み(関節唇損傷など)
つまり、
- 「どの組織に負担が集中しているか」
- 「どの動きで痛みが出るか」
によって細かく見ていく必要があります。
なぜアスリートに多いのか?
サッカー、陸上長距離、アイスホッケー、バスケットボールなどの競技では、
- 急激な方向転換(カッティング)
- 片脚で支えた状態からのスプリント
- 強いキックやシュート動作
- 接触プレー後の不安定な着地
といった動きが繰り返されます。
これらはすべて、股関節の内転筋・腹筋群・殿筋・腸腰筋などの協調性が崩れると、ある一部の組織に負担が集中しやすくなります。実際、方向転換・キック・リーチ動作は鼠径部痛と強く関連する動きであることが報告されています。
足関節捻挫とグロインペイン症候群の関係
① 人間のカラダは「一本の鎖(キネティックチェーン)」
下肢は、
- 足部・足関節
- 膝関節
- 股関節
- 骨盤・体幹
が**一本の「動きの鎖(キネティックチェーン)」**として働いています。どこか一箇所の機能が落ちると、他の部位がかばうように働き、代償動作が生まれます。
② 足関節捻挫後の”かばい動作”が股関節へ
足関節捻挫(特に外くるぶしの捻挫)の後、
- しっかり治りきる前に復帰した
- 足関節の不安定感や怖さが残った
- 片脚立ちでグラつく感じが続いている
といった状態では、足関節まわりの筋肉だけでなく、殿筋や股関節まわりの筋力・コントロールにも影響が出ることが報告されています。
また、慢性的な足関節の不安定性があると、下肢全体の関節運動や荷重パターンが変化し、股関節や骨盤まわりに異常なストレスがかかりやすくなることも示されています。
その結果として、
- 片脚で踏ん張るときに内転筋へ過剰な負担がかかる
- 骨盤が安定せず、恥骨周囲に牽引ストレスがかかる
- スプリントやキックで鼠径部〜股関節の前面がねじれるような負担が繰り返される
→グロインペイン症候群が起こりやすい土台ができてしまう、という流れが考えられます。
③ 逆に「グロインペイン → 足関節捻挫リスク増」という報告も
一部の研究では、鼠径部痛があると切り返し動作の力のかけ方が変化し、足関節捻挫など下肢のケガリスクが高まる可能性も指摘されています。
つまり、足首と股関節はお互いに影響し合っているということです。
競技別にみる「グロインペインが起こりやすい動き」
サッカー選手
- インステップやインサイドキックでのボールインパクト時
- サイドステップからの急なターン
- 守備でのスライディング後の立ち上がり
これらでは、内転筋+腸腰筋+腹斜筋+殿筋が一瞬で連動します。足関節捻挫後、無意識に「痛い側の足を避ける」フォームになると、反対側の股関節に負担が集中し、鼠径部痛が出るケースも少なくありません。
陸上競技 長距離選手
- 周回コースでの片側へのカーブ走
- 距離が増えてきた時のフォームの崩れ
- 接地時に足が内向き/外向きにぶれる
長距離選手の場合、少しのアライメントの崩れが何万歩と積み重なるため、足関節捻挫後のわずかなブレが、やがて鼠径部や恥骨周囲の痛みとして現れることがあります。
アイスホッケー選手
- スケーティングのプッシュ動作で強く外へ蹴り出す
- ボード際での接触からの片脚バランス
- ストップ&ゴーの繰り返し
氷上では足首の細かな感覚が鈍くなりやすく、足関節のコントロール低下 → 股関節内転筋への過剰負担という流れが起こりやすい環境です。
バスケットボール選手
- リバウンドからの着地時、片脚に体重が偏る
- クロスオーバーやユーロステップなどの急激な切り返し
- スクリーン回避でのねじれた姿勢でのダッシュ
足関節捻挫の多い競技でもあり、その後に骨盤・股関節の安定性が落ちると鼠径部痛へつながるケースが見られます。
ありた整骨院で大切にしている考え方
当院では、グロインペイン症候群で来院されたアスリートの方に対して、「痛い場所だけ」を診るのではなく、次のような流れで全体を評価していきます。
① 詳しい問診と動作チェック
- いつから・どの場面で痛みが出るか
- 初発が足関節捻挫や他のケガの後ではないか
- 片脚スクワットやランニングフォーム、方向転換動作のチェック
などを通して、痛みの出るパターンと原因となる動きを洗い出します。
② 骨盤・股関節・足部を一連のユニットとして評価
- 骨盤の傾き・ねじれ
- 股関節の可動域と筋力(特に内転筋・殿筋・腸腰筋)
- 足部アーチ・足関節の安定性
を確認し、ドーハ分類に沿ってどのタイプの鼠径部痛が中心かを整理したうえで、施術とエクササイズの方針を立てます。
③ 施術:筋・筋膜・関節のバランス調整
- 内転筋・腸腰筋・殿筋などの筋緊張の調整
- 恥骨周囲や仙腸関節の関節アライメントの調整
- 足部〜足関節の荷重ラインを整えるアプローチ
などを組み合わせ、「痛みの軽減」と「動きの質の改善」を同時に狙うことを重視しています。
④ 足関節〜股関節をつなぐエクササイズ指導
足関節捻挫が背景にある方には、
- 片脚バランス+上半身の動きを組み合わせたキネティックチェーンエクササイズ
- 内転筋と殿筋を協調させるブリッジ、サイドプランク、アダクションエクササイズ
- 競技動作(キック・ダッシュ・方向転換)へつなげるステップワーク
などを、段階的にお伝えしていきます。
自分でチェックしておきたいポイント
以下はあくまで目安ですが、グロインペイン症候群を疑うサインとして参考になります。
- 片脚立ちで30秒キープすると、痛い側の鼠径部〜恥骨まわりがジワジワ痛くなる
- サイドランジ(横への踏み込み)で、片側だけ股関節の付け根が詰まる/痛む
- 仰向けで膝を立て、膝の間にボールやクッションを挟んで締めると、内転筋から恥骨にかけて痛みが出る
これらが強く出る場合は、無理に練習を続ける前に専門家に相談することをおすすめします。
こんな症状があれば、早めに医療機関・専門家へ
次のような症状がある場合は、疲労骨折や股関節の重い病気、その他の疾患が隠れている可能性もあります。
- 夜、じっとしていても強い痛みが続く
- 体重をかけて歩くことが難しい
- 股関節の動きが極端に制限されている
- 発熱や全身状態の悪化を伴う
アスリートの鼠径部痛には、筋骨格系以外の原因(ヘルニア、泌尿器科・婦人科疾患、腰椎など)も含まれることが知られており、注意深い評価が必要です。
まとめ:グロインペインと”長期戦”にしないために
グロインペイン症候群は、「少し痛いけど、なんとかごまかせるから…」と無理を重ねてしまいやすいケガです。
しかし、
- 足関節捻挫など、以前のケガをきっかけとした動きの変化
- 練習量の急増やポジション変更
- 体幹・骨盤・股関節のコンディション低下
といった要素が絡み合うことで、慢性化・再発を繰り返すパターンに入ってしまうことも少なくありません。
✔ しばらく続いている鼠径部の違和感がある ✔ 足関節捻挫の後から、走り方・踏ん張り方が変わった気がする ✔ 何となく腰や股関節周りの疲労が抜けない
そんなときは、ひとりで抱え込まず、早めにご相談ください。足首から骨盤・股関節までを一つのユニットとしてとらえ、競技復帰までの道のりを一緒に設計していくことが、アスリートにとって何より大切だと考えています。